ウサギの王子に見初められ。

「送ってくね」

三上くんが恥ずかしそうに言って、上着を取る。

酔いはすっかり抜けちゃったみたい。よかった、今のが酔った勢いとか覚えてないとかだったら立ち直れない。




手をつないで、夜道を歩いた。19分20秒の距離。いや、たぶん今日はもう少しかかったと思う。途中の公園でちょっと道草したし。

「上野さんには、オレから断っとくから」

「でも、沢田さんにも知られちゃうよ?」

「困る?」

「私はいいけど、いいの?」

「オレはいいよ、もちろん。真奈ちゃんに声かけるやつ他にもいたら困るし」

いないよそんなの。そんなもの好き、三上くんぐらいだよ。そう言おうと思ったけど、女の子扱いされてるのが嬉しくて黙って受け止めることにした。




家の前まで送ってくれて「じゃあ、土曜日空けといてね」と言われて、頷く。

見送ろうと思ったのに手を離してくれないからどうしようと思ったら、ちょっと引っ張られるようにして、触れるだけの軽いキスをされた。

「おやすみ」

照れたように言って帰っていく三上くんを、ぼーっと見つめてしまった。

家まで送ってもらってキスとか、おやすみのキスとか、そういうの免疫ない。

角を曲がるとき振り返った三上くんと手を振り合って、もう一度ドキドキして、家に入った。




キスしちゃった、キスしちゃった、キスしちゃった。

と初恋のように心の中で大騒ぎして、その夜はなかなか寝付けなかった。

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