ある夏の思い出〜よつばの約束〜
「混んでるね…」

駐車場は満員、入り口は人で溢れかえってるという状況だった。

「毎年夏休みになるとこんなだ」

「そうだっけ?」

「あぁ」

「あんまり並んだ記憶とかないんだけど…」

「親が並んでくれてる間俺ら遊んでたんじゃねぇの?」

「なるほどね」

幸菜が引っ越して行ったのは小学校入学前だった。

「でもどこからこんなに人が…」

「それは毎年思う…」

そろそろ行くか、と言おうとした瞬間。

「きゃー!笠原くん!!」

ぎょっとして2人でその声の方向を見ると、…うちのクラスの女子だった。しかも10人。そしてこっちへやってきた。

「偶然だね!今日は他クラスの友達と遊びにきたの!一緒に遊ばない?」

「きゃー!1組の委員長笠原さんじゃん!」

「今日はお一人ですか??」

「私あなたのファンなんです!!」

寄ってたかってそんなことを言って、幸菜に気づかないらしい。

「いや…今日は用事があるから」

「そんなこと言わずに!」

「いや無理だから、ていうか迷惑」

必死で振りほどいて幸菜の手を掴んで逃亡した。その手はとても冷たかった。

後ろから10人の女子のクールだのかっこいいだのという黄色い声が聞こえてきた。
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