ある夏の思い出〜よつばの約束〜

その夏の始まりは

「ーさはら、笠原、笠原ってば!」

自分を呼ぶ声にはっとした。

「…なんだよ」

「なんだよじゃない、何回呼んでもぼーっとして!どうしたのよ」

俺はその時幸菜のことを考えていた。声をかけてきた笹野梨奈も幸菜と仲が良かったななどと考えていると、

「またぼーっとしてる…今日おかしいよ?」

などと言われた。

「うるせぇな、なんだ?」

「クラスで花火大会行こって話。笠原はどうするの?」

「俺?まだわかんねぇ」

「もう…あんたが早く返事くれないと困るんだけど」

「なんでだよ」

「だってあんた目当ての女の子とかいるからさ」

「なんだよそれ…」

「私に聞かないでよ」

「はいはい考えとくから」

「早く返事ちょうだいよね」

「あぁ…」

その時、ふと花火は幸菜と見たいなと思った。

「笹野」

「なに?」

「やっぱ行かねぇ」

「急ね、どうしたの?」

「ほっとけ」

笹野は幸菜に会いたいだろうか。言ったほうがいいのだろうか。

「…なぁ」

「今度はなによ?」

「…やっぱいいや」

「本当におかしい…何かあったの?」

「何もねぇよ」

「そ?ならいいけど」

笹野の背中を見送りながら、なぜ幸菜のことを言わなかったのだろうかと考えていた。
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