遠回りして気付いた想い

「おはようおございます」
俺は、そう言いながら足取り軽く自分の部署に入る。
と、田中が勢いよく来て。
「おい、高橋。昨日お前が抜けた後、大変だったんだからな」
昨日、大変だったのは俺の方だ。
酒を飲んだ後の全力疾走は、やるもんじゃないなとつくづく思わされたぜ。
何て、思ってたら。
「お前、悪いと思ってるのかよ」
何て、聞かれて。
「あぁ、思ってるよ。だが、俺の方も急用だったんだよ」
そう返せば。
「彼女か?」
唐突に聞かれ短く。
「そうだ」
答える俺。
「高橋に、彼女ねぇ……」
疑いを向けてくる目に俺は反らさずに居れば。
「まぁいいや。今度埋め合わせしろよ」
そう言って、離れて行った田中に。
「わかってる」
そう答えた。
< 105 / 111 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop