遠回りして気付いた想い

「何してるんだよ、由華。亜耶が戸惑ってるだろ」
お兄ちゃんがそう言って、由華さんの手を止めてくれた。
「だって、亜耶ちゃんがあたしの事"お義姉さん"って呼んでくれるから、つい嬉しくなっちゃって」
由華さんが口を尖らせて、お兄ちゃんに言う。
うん、かわいいです。
「だからって、これは遣りすぎだろうが」
お兄ちゃんが、呆れたような目で由華さんを見て、私の髪を手櫛で直し出す。
そんなに酷いことになってるんだ。
鏡がないから状態がわからないから、されるがまま。
「…ん、よし。直った」
お兄ちゃんが私の頭から手を離した。
「で、先輩なんて?」
由華さんがお兄ちゃんに聞く。
由華さんが言う『先輩』は、遥さんの事。
「仕事が少し押してるから、遅れるそうだから、先に行っとけと」
お兄ちゃんがそう言うと。
「先輩来れないんだ。残念だなぁ。弄れないじゃんか」
何て、不貞腐れる由華さん。
「来れないじゃなくて、遅れるだからな」
お兄ちゃんがすかさず訂正してる。
この二人のやり取り見てても飽きないんだよね。
「ほら、亜耶と買い物したかったんじゃないのか?早くしないと、店閉まるぞ」
お兄ちゃんの言葉に我に返った由華さん。
「そうだった。当初の目的を忘れるとこだった」
そう言ったかと思ったら、私の腕を鷲掴みにし。
「行くよ、亜耶ちゃん!」
言うが早いが、走り出した。
うわぁぁぁぁぁ。
ちょ、ちょっと由華さん。
口に出したくても、急なことで対処できない。
「おーい、由華。俺を置いてくな‼」
背後でお兄ちゃんの声がした。
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