キエルビト

出会う

とある草原…



「はぁっ、はぁ…」
  草原を突っ切る。
 無我夢中にただ足を動かし続けた。
 

 …追手は来ただろうか。
 そう思いつつも、体力は徐々に、だが確実に減っていく。数分経てば目に見えて速度は落ち、息づかいが荒くなっていた。
  
 
 呼吸のリズムが乱れ、酸素が入ってこなくなる。 苦しい…。
  ふと、思いつく。空気抵抗は消せないのだろうか。
 
 「空気抵抗、はぁっ、消え、ろ、はぁ…」
  消えない。
 まあ常識的には当たり前のことだ。
 ふぅ、と息をつく。安心と失望によるものだった。
  全く、消せないものがあるだけで救われるとは…
  それも、私が消せるものの条件がなんなのか、把握していないからだろうか…
 「あ。」
  気づいた時には視界が反転していた。
 あっというまに私の体は重力に負け、倒れこむ。
 心臓が大忙しで働いてくれているのがわかる。
 薄れ行く意識の中考えた。

 …あとは神様にまかせてみるのもいいかもしれない。
 捕まることを願うなら捕まるだろう。
 どっちにしろ起きるまでわからない。
…と。
  
  そう決め、神様に決断をゆだねると、草花の心地よさに身をまかせ、力を抜いた。

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