未来の君のために、この恋に終止符を。
終わりの序章




重く響く、音がした。



心臓がびりびりと震え、身体の感覚が一瞬なくなる。

残されたのは自分の異様なまでの熱さ、そして腕の中のぬくもり。



頭を抱えこんでいた手を押しのけて身を起こしたそれは、どうやら耳元でなにかを叫んでいる。

だけどもう、言葉として認識することはできそうにない。



視界に揺らぐ人影にふっと小さく笑った。

多分きっと、笑えたはず。



────ああ、君を、守れてよかった。



唇がかすかに動き、ひゅっと小さな音を立てた。

自分の頬に触れる恋人に応えてあげることさえできない。

……願いを叶えてあげることも。



傷つけてばかりで、わがままに付き合わせて。

迷惑をかけるばかりで、なにもしてあげられなかった。

振り回して縛りつけて、どうしようもなかった。



それでも、確かに、君のことが好きだったんだよ。



弱くて、だめな恋人でごめんね。

どこかの世界で君の願いが……叶えばよかったのに。



もう遅いけど、ひとりよがりかもしれないけど、願っている。



未来の君が苦しみませんように。

悲しみませんように。

笑って、幸せでありますように。



ただ、それだけを。






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