未来の君のために、この恋に終止符を。




「立川さんの言葉はみんな、本当にあったことだった。
それでなにも訊かれたくなくて、片岡さんのことを避けていた」

「花沢さん……」

「片岡さんはなにも悪くないのにいやな思いをさせたこと、謝りたくて呼んだの」



ばからしい言い訳を並べた。

ずらりと片岡さんの前にそろえても、それらはショーケースの中のケーキのようには美しくない。

身勝手な私の醜さがにじみ出ている。



「花沢さんが話してくれて、今すごく嬉しい。
でもね、話したくないことは訊かないから、不安に思わなくていいんだよ」



揺れるふたつ結びと違って、彼女の瞳は私を見据えて揺らがない。

その上、ふわりと顔を綻ばせる。



「だって、花沢さんは優しいから」

「やさ、しい……?」

「うん、優しい。
だからいやがることはしたくないよ。
優しい人には、優しくしたいよ」



優しいのは、晴樹、少し意地悪だけど安藤くん、そして……片岡さんのような人だ。

私はそうじゃない。

そんないい人にはなれない。



鼻がつんと痛み、こみあげる衝動をかみ殺すために掌に爪を立てた。

だけどこらえることはできず、あふれた感情を吐き出した。



「違う、優しくなんてない!
だって……、だって晴樹は私のことなんて好きじゃないのに、付き合わせてる」



あの日、病室でなんでも私の願いを叶えると言う彼にすがった。

断れない状況下で最低なことを望んだ。

それのどこが優しいというんだ。






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