未来の君のために、この恋に終止符を。
始まりの終章




浮かぶ意識は曖昧なまま、視界を塞ぐ重たいまぶたを認識する。

それはどうやって上げるものだったかな、なんて頭のどこかで考えてすぐ、ゆっくりと押し上げた。



目の前に映るのは、真っ白の天井。

つんと鼻につく匂いに顔をしかめて、小さく声をもらした。



「ん……」



ずっしりと重たい身体の感覚に困惑しつつ、顔を動かす。

すると、すぐ近くにいた女性と────実莉と目があった。



腕に包帯を巻いた痛々しい姿だけど、花瓶に花を生けてくれてくれている。

なんの声もかけられないことを不思議に思うと、口元を手で覆っていた彼女は深く息を吸った。



声を噛み殺しながら、泣いていた。

ぼろぼろと崩れてしまいそうに泣きながら、優しく笑っていた。



「ね、言ってたでしょ? ────待っていてって」



そう口にした彼女に、ああそうだね、と小さく口元をほころばせた。

身体のあちこちが痛く苦しい、だけど呼吸ひとつで生きているんだと実感できることもそうない、と呑気なことを考えた。



「実莉……」

「なに」



短い返事だけど、ひだまりのようにあたたかな手が彼女に向かって伸ばした俺の掌を包みこんだ。

そのぬくもりに、俺は頬をとろけさせた。



「また、会えたね」



               fin.






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