未来の君のために、この恋に終止符を。




「……俺が割った母さんのカップを実莉が割ったことにしてくれた。
実莉を可愛くないって言った同級生を殴った。
1日1本のアイスを黙って2本目をはんぶんこした」

「っ、」



つらつらと並べられるそれは、過去の出来事。

私と晴樹の、ふたりの思い出のこと。



誰かが知っていてもおかしくないこともあるけど、わざわざ誰かに言ったことなんてないそれを口にした、彼に向けて体をひねる。

驚きから見開いた瞳が晴樹をとらえた。



「同じ思い出はあっても、俺のすべての過去が実莉の過去なわけじゃないんだよな……」



ぽつり、とこぼした彼の言葉。

苦いものが胸を覆って、埋め尽くしていく感覚がした。



まるで本当に彼は、晴樹みたいな口ぶりで。仕草で。

彼の表情にやるせない気持ちを煽られた。



ただ黙っていると未来の晴樹は私に向かって手を伸ばした。

それはそっと頭に向かって……風が髪を撫でた。



ぬくもりはないとわかっていたはずなのに、それでもなお驚きは身をついた。



その反応のせいか、それとも彼自身も私と同じように感じたのか、それはわからない。

だけど確かに彼は慄き、すぐさま手を離した。



目をそらす。

触れられない切なさが痛くて、私たちは現在の晴樹が部屋に戻って来るまで、ただ黙りこんでいた。






< 25 / 214 >

この作品をシェア

pagetop