未来の君のために、この恋に終止符を。




そっと指先で傷をなぞった。

ぽこりと膨らんだそれを見つめながら、胸がしくしくと痛むのを感じる。



未来の晴樹の言葉はうそじゃなかった。

本当だった。



立川さんたちが来て、映画を観ることになって、私は……傷ついた。

目に見えないそれが増えた。



晴樹に近寄らないで、楽しそうにしないで、……触れないで欲しい。

そんな醜くてずるい私の心を、暴かないで。



唇を噛む。

じんと痛む。

だけどその痛みがないと理性を保てない気がする。



立川さんが妬ましかった。

逃げ出すことしかできない自分が恥ずかしかった。

熱く、冷たく、心が燃えるほど、なにもかも憎い。

そんな感情に苛まれていると、



「実莉」



突然名前を呼ばれ、その声の持ち主が思い当たり、素早く袖をおろした。

その上から手で押さえこみ、振り向くと、



「なん、で……」



そこには、未来の晴樹がいた。



眉を下げて、その下の瞳は丸く優しい。

あたたかな夕日のようで、柔らかくも切ない眼差しだ。



「なんであんたが、ここにいるの……」



私の当然の問いは、口元を緩めるかすかな笑みで応えられる。






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