未来の君のために、この恋に終止符を。




「平気。しばらくしたら落ち着く」

「そう? 立川さんは長袖だから、それもあるのかもしれないね」



服装について触れられて、頬に触れたままの手に不自然な力が入った。

その様子を見ているはずの彼女はなにかを察しているのか、それ以上長袖について言わない。



「本格的に体調が悪くなったら言ってね。
ちょうど次の数学も同じクラスだし」



そういえば事前に配られたクラス分け結果の紙に片岡さんの名前があった気がする。

つまり次も彼女は私の隣にいるつもりなんだろう。

数学は晴樹と同じクラスだから反対側の隣にはきっと彼が座る。



みんなして私に気を遣って、ひとりにならないようにして、話しかけて、そんなことばかり。

いつだってそれが理由で私は劣等感に苛まれ、その想いに沈んでしまう。



自分の言葉どおりに私の顔色がよくなってきたのを見て、片岡さんは間を保たせようと言葉を紡ぐ。



「花沢さんは数学が得意なんだよね。
晴樹が言ってたよ」

「まぁ、他の科目よりは」

「なにかあったら頼らせてくれる?
また教えて欲しいな」



プレッシャーを感じつつもなんてね、と続く言葉がそこまで重たくないのは、片岡さんの性格によるものだ。



しっかりしていて、周りをよく見て、晴樹とよく似た部分がある。

誰とでも仲がよく、独特な立場にいる。

浮いている人を、私を、放っておくことができない。



それはなんて可哀想なんだろうか。






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