未来の君のために、この恋に終止符を。




「実莉」



いつの間にか目の前にしゃがみこんでいた未来の晴樹が、私の顔をのぞく。

ひだまりのようにあたたかな瞳が私を見つめる。



「……なに」

「義務じゃないよ」

「……」



うそだ。

付き合っているのも、私の世話をしてばかりなのも、片岡さんと距離が縮まることを喜ぶのも、みんな責任を感じているだけ。

本気じゃないってさすがにわかる。



それなのに黙りこんだ私に対して彼はきっぱりと強く言い切った。



「俺は実莉を祝いたくて、毎年プレゼントを用意していたんだよ」



子どもに言い聞かすようにゆっくりと、理解させるために言葉を紡ぐ。

信じ切っていない私の顔を見て眉を下げて、私の一房落ちた髪に手を伸ばした。



「実莉が生まれてきてくれて、俺は嬉しい」



そんなふうに言われるくらいなら、いっそのこと「いなければよかった」と言われる方がよかった。

そうしたら私は晴樹から離れようと思えるはずなのに、そんな優しい言葉を向けられてしまったから。

だから、私はまた彼に甘えて、そばにい続けるんだ。



「っ、」



息をつまらせて、私は顔を見られないようにうつむいた。

風がふわりと髪を揺らした。






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