セピア -sepia-

出来立て入道雲




「夏休みは中学生としての自覚を持ってー……」


担任のそんな声が教室に響くけど、ここにいる生徒たちは聞いているようで聞いていない。どこか浮かれたような雰囲気が漂っている。


「あと、飲酒とか喫煙とか非行に走らんことー」


担任もさっさと終わらせようとしているのか、真面目に話す気はないらしい。

どうせ毎年同じようなことを言われているわけだし、今さら言わなくても、と思っているのがひしひしと伝わってくる。


隣のみどりは、頬が緩みまくっている。


「はい、じゃあ終わり! また二学期にねー」


担任がそう言った瞬間、あちこちで生徒は騒ぎ出した。

今日は、一学期最後の日だ。


「終わったなー」

「終わった終わった!」


達郎と由香はそう言いながら、鞄を持って立ち上がる。


「え、ちょっと待ってちょっと待って……!」


みどりは緩んでいた頬を引き締め、我に返ったらしく、慌てて荷物を詰め込み始めた。

どうやら置き勉を持ち帰っていなかったようで、みどりの引き出しからは次から次へと教科書やノートが出てくる。




< 141 / 287 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop