セピア -sepia-

雨合羽と黒い傘




「ありがとー! じゃーね!」

「みどちゃんばいばーい」


笑って手を振ったみどりに、へらっと笑う父親。

みどりの姿が見えなくなったあと、俊彦と俺は揃って溜め息を吐いた。

そんな俺のほうを父親は振り向く。


「なんだかんだ、柊も楽しそうにしてるじゃないの」

「黙れ変態」

「ははー、ひどいなー」


こんなやつと血が繋がっているなんて、自分でも意味が分からない。

多分、俺はかなりの母親似なんだと思う。


「友だち作らないとか言ってたくせにねー」

「うっせハゲ」

「みどちゃんも可愛いし、良かったじゃないの」


何が良いのかまったく理解できないけど、父親は満足げに頷く。


「で、柊、どこまでいった?」

「……は?」

「みどちゃんとだよー」


脈絡もなしに、いきなり何を言い出すのかと思えば。


こいつの脳みそ、豆腐が入ってるのか。

眉間に皺を寄せると、視界の隅で俊彦が吹き出しているのが見えた。


「……みどりが何だって?」

「照れんなってー、父さんには何でもお見通しだっつのー」


へらへらと笑いながら、俺を肘をつつく。

それを見て、さらに吹き出す俊彦。笑ってないで、この脳内花畑変態野郎を殴ってくれないだろうか。


「付き合ってんだろーよー」

「誰があんなちんちくりん……っ!」

「はははー、ちんちくりんとか言っちゃってー。確かにそうだけどー」

「付き合うかっての!」

「あれ、まだ付き合ってないんだ?」


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