クールなCEOと社内政略結婚!?
「まぁ、こればっかりは現場の数を踏まないとね。これからよ、これから」

 肩をたたかれた私は、「がんばります」と俄然張り切った。

 雅さんの傍で出来る仕事は、今までの私を見なおす機会を与えてくれる新鮮なものだった。デザインだけじゃない、彼女の仕事に対する姿勢や、その人がらに私は、惚れ直していた。


「梨花ちゃん……これ、あ、ゴメン」

 書類を渡す時に、デスクの上のスマホが震えたのに気がつく。画面の表示は『俊介』となっていた。すかさず梨花ちゃんのチェックが入る。

「彼氏ですかっ?」

「違うから、ちょっと電話してくる」

 からかうような視線から逃げ、私は通話ボタンをタッチしながら廊下に出た。

「もしもし……俊介どうしたの?」

『悪い。まだ仕事中か?』

「うん。でも少しなら大丈夫」

 すでに終業時間は過ぎている。短時間ならば他の人に迷惑をかけることもないだろう。

「で、どうしたの?」

 私は会話を続けながら、階段の踊り場に向かう。あまり人通りもなく、私用電話をするにはうってつけの場所だ。

『日本に戻ってきたから、一応な。それに前回あんな別れ方したから』

 そう言えばそうだった。すごく遠い昔の話をしているような気がする。

「大丈夫。まぁ、なんとかうまくやってるよ」

 この生活にも慣れてきたのか、今のところ大きな不満はない。人よりも変わった人生を送っているせいか、順応能力だけは高いと自負している。
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