クールなCEOと社内政略結婚!?
「あぁ、彼ね。浮田孝文くん。あさ美の旦那様になる人」

 はぁ? なに笑顔で決定事項みたいに言ってるの?

「孝文くん、こっちが娘のあさ美ね。あぁ……でもふたりとも同じ会社なんだから知ってるんじゃないのか?」

「お父さん……同じ会社でも、一社員の私と社長は――」

 私の言葉を、社長の声が遮る。

「僕は存じ上げておりますよ。あさ美さんは優秀な社員ですから」

 にっこりと笑う、その顔が胡散臭い。

 なにが優秀な社員だ。私が優秀な社員なら〝中学生の落書きレベル〟なんてことを言うはずがない。

 先日との態度の違いに呆れて、ものが言えない私をほうっておいて、ふたりはさっさと席に着いてしまう。

「あさ美、孝文くんがかっこ良くて驚いているんだろうけど、とりあえず座りなさい」

「なっ……わ、私は」

 相変わらず娘の気持ちを読めない父に、言い返そうとした、だけどそれを阻止するように、社長の冷たい視線が私に向けられた。

――座れ。

 そう言われているように感じて、私は黙って父の隣――社長の向かい側に腰を下ろした。それはもちろん、このお見合いに納得したからではない。彼のその冷たい瞳にかけてみることにしたのだ。

 きっと彼ならこんなバカげたお見合い、破棄してくれるに違いない。

 そうとくれば、さっさとこんなお見合い終わらせよう。貴重な休みをこんなくだらないことで潰したくない。
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