クールなCEOと社内政略結婚!?
 あ、いろんなことがありすぎて、この人の存在忘れていた。

「社長……まだいらしたんですか?」

 思っていたよりも言い方がきつくなってしまったが、相手は全く気にしていないようだ。もとはと言えば、この人が父の悪ノリに乗るから、私が動揺してしまったのだ。

……と、責任転嫁してみる。

「それ、気に入ったみたいだな。よかった」

 長い脚でこちらに向かって歩いてくる。そして目の前にあるソファに腰を下ろし、長い足を組んだ。そのリラックスした態度が彼の余裕の表れだと感じて、イラッとする。

 どうしてこんな堂々としてるの? 

 彼の考えがまったくわからない。

「あの……どうして――」

「あぁ、着物だけど、すぐに知り合いの業者に出した。和服専門のクリーニング屋だからそこらの店より確実に綺麗にしてくれるはずだ」

 あ、バタバタしていてすっかり着物の惨状を忘れていた。あれは大切な母の形見なのに。

「みたところ、古いものだが大切にされてたみたいだから、一番腕のいい職人のところに持っていった。安心していい」

「ありがとうございます」

 母の形見の着物を大切に扱ってくれたことを、嬉しく思う。そこはさすが服飾メーカーの社長だ。

 私の安堵の表情を見て、社長も満足そうな顔をみせる。
< 27 / 239 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop