クールなCEOと社内政略結婚!?
「あぁ、悪い。いつも通り想像の斜め上をいく人だなぁと思って」

 まだ笑い足りないみたいだが、私のきつい視線をうけて、なんとかこらえようとしていた。

「もう、この際父のことはどうでもいいんです。私はこんな結婚するつもりありません」

「どうして? 俺がいいって言ってるのに」

「はぁ?」

 なんという答えだろう。まるで今まで自分の思い通りにならなかったことが、ないみたいな言い方だ。

「結婚はお互いの合意のもとにするものです」

「だったら、お前がうなずけば済む話だ」

「それができたら、苦労しませんっ! そもそも社長はどうしてこの結婚の話を受けたんですか? 父に恩があるって言ってましたけど……」

 なんとか突破口を探そうと、私は彼がこの結婚に合意した理由を問いただした。

「いまから五年前、急死した親父の後を引き継いで一年経った頃だったが……アナスタシアは経営難に陥っていた」

「えっ……」

 就職活動中だった私は、母が好きだったアナスタシアを第一希望にしていて、そのため色々なことを調べた。業績についても目を通したのに、気がつかなかった。

「親父が死んで、それまで付き合いのあった銀行や大株主達の態度が一変したんだ。まぁ、それも仕方ないだろう。たかだか三十二歳の新米社長に、諸手を挙げて投資する人間なんて物好き、なかなかいない」

「そして、その物好きが父だったということですか?」

 社長がゆっくりとうなずく。
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