クールなCEOと社内政略結婚!?
 今のように、男性の紳士服から女性の普段着まで、様々な洋服を扱うようになったのは、仕事を引き継いだ彼女の息子である、先代の社長が会社を引き継いでからだ。

 ウエディングドレスだけでなく、日々のどんな時でも、アナスタシアの服を身に着けてほしいという思いから、様々なラインを展開するようになった。

 そしてその思いが世間に受け入れられ、業界でも首位争いをするほど、大きな会社へ変貌を遂げた。

 その中でも、やはり歴史の長いウエディング部門は、我が社では花形部門だ。私はそこに美大を卒業後、新卒で運よく配属されて、この四月にようやくアシスタントデザイナーから、デザイナーへ昇格できた。

 念願叶ったのに、こんなミスしてしまうなんて、なんという、失態……。

 私が落ち込んでいるうちにも、会議は進んでいく。目の前のスライドを確認しながら、必要と思われることを資料に書きこんでいると、落ち込んだ気持ちはすぐに薄れ、仕事に没頭していく。

 しかしそれは会議に集中する……というのとは少し違う。

 マイクを通して耳に入る単語に、創作意欲が刺激されてしまう。

「エアリー……洗練された……大人……」

 単語が脳内で混ざり合って、イメージが膨らむ。私は気がつけば、ペンを走らせて資料の片隅にデザイン画を描いていた。
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