兄弟ものがたり
「……えっと、お菓子……?」

「お菓子だ!おまえ、そういうの得意だろ?文化祭の時にロールケーキとかクッキーとか作っていたじゃないか。その時、お菓子作るのが好きだって言っていただろ?」

「……まあ、その……確かに言ったけど……」


困惑気味の立河をよそに、陽仁は更にぐっと身を乗り出して話を続ける。


「真悠がな、練習試合の時に弁当を作って来てくれたんだ。だから、そのお礼がしたい!借りた容器を返す時には、お礼に何か詰めて返すもんなんだろ?昔ばあちゃんから聞いたんだ」


そこまで言って陽仁は、最後に二人の間にある机にドカッと風呂敷包みを置いた。


「そういうわけだから、頼む!立河」


突如として目の前に現れた風呂敷包みに、立河は呆然と立ち尽くす。


「なっ、なに……これ」

「真悠が持ってきた弁当箱だ!安心してくれ、ちゃんと綺麗に洗ってある」


いや、問題はそこじゃない……と心の中で立河が突っ込んでいる間に、陽仁が風呂敷を広げると、中から三段重ねの重箱が現れた。


「えっ、これ!?」

「そう、これだ!」


最早目が点になる立河をよそに、陽仁は笑顔で重箱の蓋を軽く叩く。
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