空から雨が降る日。【完】



それから私たちは一日かけて、意見を言い合い良い案をまとめた。


「本日は本当にすみませんでした…っ!どうぞ来週もよろしくお願いします…っ」

会議室を出ていく――会社の人を見送る。
私と上司は出ていくみんなにお辞儀をする。

「おう、いい案できてよかったよ!お疲れ様」
「お疲れ様。タオルありがとうね」

みんな、良い人ばかりで手をあげて出ていく。

「あっ…」

私は最後、鞄に資料を詰め込んでいた晴太の姿をみて声を漏らした。

「吾彦さん、本日はありがとうございました。うちの星埜のために」

私より先に上司が前に出て、お辞儀をする。
私もそれに合わせて、慌てて頭をさげる。

「お互いさまですよ。よかったです、うまくいって」

「えぇ。本当。ありがとうございます」

「では私はこれで」

そう言って部屋を出ていく晴太。

「あ…っ」

まだ、まだ。言えてない。
私からまだ、何も、お礼も言えてない。

そう思った私は、上司を置いて部屋を駆け抜けていた。
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