空から雨が降る日。【完】


「あーぁ、何やってんのお前」

中はなにも入ってなかったからよしとして。
ジョッキを拾い、雫を見ると案の定顔が真っ赤で。


「ふっ」

「な…っ」


そう。それでいい。

きっと雨が降っていたら俺は雫にこんなこと言えない。
雫も雨を見ると必ずお前を思い出すから。

それでもいい。それでもいいから。
晴れの時は俺を思い出せ。

勝手に前に進むな。
前に進むなら俺を連れていけ。

どんどん、真っ赤に染まれ。


俺を男として意識しろ。


「俺、お前のことガンガン狙ってくから」

そういうと雫はガタンと顔を机に伏せた。

それを見て笑う俺。


もっと、もっと意識しろよ。それで俺のことを好きになればいい。

俺は残っていたお酒を一気に口に放り込んだ―…

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