月が綺麗ですね。




それは、誰も見ていないところで行われていて。

取り巻きも一人もいなかった。

椎名くんの小さな親切を一つ見つける度に、宝物をまた一つ手に入れたような、そんな気がした。

私だけが知ってる、小さな宝物。

私以外に見ている人も、いたかも知れないけど、勝手に特別に思っていた。

きっと私が知らないところでも、宝物は落とされている。

一目惚れした時以上に、もっと、もっと、この人を知りたい……この人の隣にいられる人になりたい……彼女になりたい。

気持ちが募っていった。


私は、こんな境遇なせいか、色んな人に優しくされてきた。

男子に優しくされる度、その人を好きになって、告白して、フラレて……そればかりを繰り返していた。

だから初めてだった。

自分以外に向けられる優しさに惹かれたのは。


そしてある日、雪絵さんにこんなことを言われる。

『告白…しないの?』

ドキッとした。

初めての本当の片想いは、見ているだけで楽しくて。

いつの間にか、彼女になりたいというよりも、このまま、現状維持を願う気持ちが大きくなっていた。


でも、雪絵さんの言葉で、前に進む決意をした。

絶対に、彼女になる。

初恋は叶わないなんて言うけれど、気にしない。

雪絵さんにも、私が彼女になることで、前に進んでほしい。


最後は、絶対ハッピーエンドがいいから――――






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