コクリバ 【完】
絢香に腕を引っ張られて立ち上がる。

「…ふぅー…」
思いっきり大きな深呼吸をした。

すっと目を開き、絢香の大きな眼を見返すと、
二人、無言で頷き合った。

討ち入りだ。

美術室を出てこれまで全く行ったことのなかった教室棟の1階へ、3年生の教室がある階へ二人三脚のように下りていく。

ドキンドキンと胸が大きく鳴っている。

誰とすれ違っても、無視できた。
すれ違いざま振り返られても気にならない。

目指す3年4組の教室のドアの前に来た時には、心臓がバクバクととんでもなくうるさく鳴っていた。

ドアの前で絢香ともう一度見つめ合って、頷いた。

もっと早くこうしていれば良かった。
誰にも遠慮しないで、高木先輩に会いに来てれば良かった。

また高木先輩と笑い合える、そんなことを考えて自然と微笑んでいた。
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