コクリバ 【完】
「はっ?」

心臓の鼓動がドキドキ、ドキドキとうるさく鳴っている。
血が逆流したんじゃないかというくらい、頭が冷静になる。
血の気が引いて冷たくなった手をグッと握りしめた。

こんな男、少しでも尊敬した自分が馬鹿らしい。
教育者として、年上の男性として、敬意を払っていた自分が情けない。
こんな最低な男が副園長だなんて笑わせる。

結局、男なんてそんなもの。
理想高き教育者なんて、ただの幻影、それこそ理想論。

「最低……」

それだけ言うと、ドアを開けて外に出て、逃げるようにその場から離れた。
今日のお礼も言わず、振り返ることもなく走って幼稚園に戻った。

職員用の入口の前で呼吸を整えて中に入ると、真理子先生やめぐみ先生が待っていてくれた。

お礼を言って、笑顔を向けようと思うけど、顔に力が入らない。

「ドンマイ!」

真理子先生が、バシンと肩を叩く。

それが嬉しくて、私の目からは涙が落ちた。
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