コクリバ 【完】
零れそうになる涙と、震える唇を見せないように下を向く。
あの人ではない―――
分かっている。
分かっているけど、こうして何年経っても忘れきれていない自分が嫌になる。
しばらくして落ち着いてくると、この状況がとても恥ずかしくて、申し訳なかった。
谷さんは、黙ってそこにいてくれた。
「あの……すみませんでした」
精一杯の声を出したけど、私の声はとても小さくて、こんな静かな森の中だったから、辛うじて聞こえる程度。
谷さんは「ふっ」と息を漏らし、近くの岩に腰を落とした。
その表情が柔らかく感じる。
「泣きたいなら泣けばいい。そんなに急いで戻ることもないだろ」
あの人の声が、私に優しく語り掛ける。
だけど、あの人ではない人が、私をじっと見ていた。
谷さんから視線を逸らして、私も近くの岩に座った。
「もう大丈夫です。すみませんでした」
セミの鳴き声と風の音だけが大きく響いていた。
先に行った二人の気配もない。
静かに風に揺れる木々を、谷さんもただ見ている。
「……」
「声が……」
「ん?」
「谷さんの、声が……」
「うん」
「……似てるんです」
「……好きなやつに?」
「……好きだった人に……」
あの人ではない―――
分かっている。
分かっているけど、こうして何年経っても忘れきれていない自分が嫌になる。
しばらくして落ち着いてくると、この状況がとても恥ずかしくて、申し訳なかった。
谷さんは、黙ってそこにいてくれた。
「あの……すみませんでした」
精一杯の声を出したけど、私の声はとても小さくて、こんな静かな森の中だったから、辛うじて聞こえる程度。
谷さんは「ふっ」と息を漏らし、近くの岩に腰を落とした。
その表情が柔らかく感じる。
「泣きたいなら泣けばいい。そんなに急いで戻ることもないだろ」
あの人の声が、私に優しく語り掛ける。
だけど、あの人ではない人が、私をじっと見ていた。
谷さんから視線を逸らして、私も近くの岩に座った。
「もう大丈夫です。すみませんでした」
セミの鳴き声と風の音だけが大きく響いていた。
先に行った二人の気配もない。
静かに風に揺れる木々を、谷さんもただ見ている。
「……」
「声が……」
「ん?」
「谷さんの、声が……」
「うん」
「……似てるんです」
「……好きなやつに?」
「……好きだった人に……」