コクリバ 【完】
川に橋がかかっているところまで来た。
遊歩道は、橋の下をくぐるように続いている。

この橋を渡った対岸は、雨の日に高木先輩を見かけたコンビニ。

「先輩。この前、チャリでここ通りませんでしたか?そのとき、もしかして家に来ませんでした?」
「あぁ。行った。緒方先輩にDVD貸せって言われた」
「私、そのとき、あそこのコンビニから見てたんです。先輩、傘ないんですか?」

高木先輩が立ち止まって、振り向いた。

「差すのが面倒だったんだよ」

自転車を橋げたに立てかけている。

「でも、すっごいびしょ濡れでしたよね?」

先輩が、リュックを外して自転車の前カゴに入れた。

「あぁ。風邪ひきそうだった」

そして、私のカバンを掴んで、胸から引き抜いた。

「……え?」

スカスカになった腕は、落ち着かなさを煽る。

ここは橋の真下で、人目がないところだと今更だけど気付いた。
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