事故死した家族、閉鎖病棟の檻、屋上からの景色~灰色の空から見えた星~
中1女子と婦警の電話
2007年、12月30日。

私の祖父母のマサオとアキコが、交通事故にあった。

出かける直前。
「有ちゃん。行ってくるよ。」と、声をかけられたが、私は何も返事をしなかった。

中学1年生。反抗期と呼ばれる年齢である。
致し方ないことかもしれない。

しかし、成人を過ぎた私は
せめて「行ってらっしゃい。」と言えば良かった、と後悔している。

「年末なんだし、家で過ごせばいいじゃんか。」
とも、言えば良かったと後悔している。

その日、私たち一家は大掃除をした。
物や、場所が綺麗に片付いた。
新しい年を迎える準備が整った。
疲れ半分、嬉しさ半分に、父はビールを呑みはじめた。

そんな時だった。
1本の電話が入った。
「有、出てー。」と、いつものように家族に頼まれたので、私は受話器を取った。

「◯◯警察署です。」
電話の相手は、地元の警察署の婦人警官だった。
「お宅のおじいさんとおばあさんが、交通事故に遭いました。」
突然、現実味の欠片もないことを、淡々とした口調で言われた。
何かを色々言われたのだが、ショックが大きく、現在はその内容をあまり覚えていない。
ただ、祖母がドクターヘリに乗り、祖父が救急車で運ばれた、と伝えられたことは鮮明に覚えている。

私はまだ13歳だ。
事の重大さを背負いきれず、ビールを3本空けた父に、受話器を渡した。

顔を赤くしていた父であったが、まず一度真顔になり、その後、どんどん血の気が引いていった。
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