転職したら双子のイケメンがついてきた


「いいから早く始めてちょうだい!?」


「は、はい…かしこまりました」


担当者が困り、躊躇う。
他のスタッフに連絡する隙も与えない。


「…あの、私なら大丈夫ですから、代わりに行ってあげてください…」


私の施術担当の女性に、隣には聞こえないように耳打ちする。
聞こえたら厄介だ。


「…申し訳ございません。少々お待ちくださいませ」


顔の前で拝み、囁き返すと、フロントへ急ぐ。


「何かいいことおありだったんですか??」


さりげなく隣で会話が始まる。
あからさまなご機嫌伺いだけれど、当人はもう機嫌を直し、


「そうなの。主人が臨時でボーナスを頂いて」


オホホ、と笑う。


「官僚の妻も大変なんだから、これくらいのご褒美を頂かないとね」


恐らくもうマッサージを受けながら。


「そうですよね」


「…そうそう。前島興業ってご存知??ウチが実家と共に懇意にさせて頂いてるの。景気がいいみたいよ」


つまり今日のお小遣いの出どころだ。本当によく喋る。
好都合だ。



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