Those who met those lost(失ったもの、出会ったもの)

**愛し続ける


貴晃の心配を考えて
臨月前には、病院に入院して
お産に備えた。

出産は、貴晃が側から離れずにつき
無事に女の子を出産した。
2500㌘の少し小さい女の子だ。

貴晃が、赤ちゃんの名前は
「唯華(ゆいか)
僕の唯一の花が産んだ子だから
ゆいかにするよ。
いいかな?」
と、言ってくれた。

「うん、ありがとう。
可愛い、名前を考えてくれて。
唯華ちゃんだね。
唯華、ようこそ。
私がママで、貴晃がパパだよ。
これから、宜しくね。」
と、言った。

貴晃は、唯華を抱く
杏ごと抱き締めた。

それから二人は、
干菜の結婚式に帰国したり、
優愛とあったりした。

その後、杏は男の子を出産した。
この子は、上を向いて
生きて欲しいとの願いで
「陽向(ひなた)とするよ。」
と、貴晃は言ってくれた。

唯華も陽向も
すくすく育ち、
イギリスの生活にも
慣れ親しんでいた。

唯華は、杏の血をひいてか
瞳が紫のような色をしていて
小さいときからモデルを頼まれ
やっていたからか
モデルとして生きていく。

陽向は、
「ママの足を治したいから
医者になりたい。」
と、言って頑張っている。

二人とも、優しくて
親思いの子供だ。

貴晃は、あの時から
何ら変わらずに杏を愛し
杏を大切にしていた。

唯華も陽向も、貴晃が杏を溺愛して
いつも杏に寄り添っているのを
わかっているから
貴晃が、杏のそばにいるときは
そっとしていた。

二人は、本当に仲がよい両親を
自慢にも思っていた。



杏は、あれから、ずっと考えている

今も、記憶は戻らないが
なぜ、貴晃の事を覚えていたのか。
でも、全てを覚えているわけじゃない。

貴晃が、そばにいてくれたことと
「頼むから一人で泣かないで
       ‥‥‥俺を頼って。」と
言った貴晃の言葉······と
去り際の貴晃の寂しげな顔が
記憶に残っていた。

だからなのか·····
この人は、私の全てを
包み込んでくれて‥‥‥
一人で苦しまなくて‥‥‥
良いと···言ってくれる·····と

心が叫んでいるように思えた。

でも、傷つけたと思う
優愛もお姉ちゃんも
幸せになってくれて
本物に良かった。
と、杏は心から思っていた。

すると、貴晃が
後ろから、杏を抱き締めて
「なに、考えているの?
穏やかな顔をしているよ。」
と、言ってくれたから
「うふふっ、ありがとう。
みんなが、幸せで良かった
と、思っていたの。」
「杏はいつも人の事だね。
まあ、そんな杏だから
愛しくて、たまらないんだけどね。」
と、言ってから
杏の向きをゆっくり換えて
啄むようキスを何度もした。



貴晃は、杏がいるから
穏やかに暮らせるし
杏は、貴晃がいるから
生きていけていた。

 失ったものも合ったが
   その倍に幸せが訪れた。



 貴晃を······

  ·······変わることなく····

    ···ずっと····ずっと······

  ·····愛し続けて······行きます·····


          ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥完‥‥
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