家族の絆
出会い Encounter
 21世紀スタートはなんとなく重苦しいものだった。その重苦しさは、1年前からのコンピュータ2000年問題に端を発していたのかも知れない。いや、90年代の不毛の10年を経てのそれだったかも知れない。そんな幕開けだった。そして実際に21世紀を迎えた2001年9月11日に引き起こされた国際テロ事件は世界中を震撼させた。
 そうはいっても、2000年9月のシドニーオリンピックでの高橋尚子さんの活躍は日本にとって華やいだ話題であったし、2001年12月の御新宮愛子様のご誕生は日本中を挙げてのおめでたい出来事であった。


 山崎祐一は日本有数の電機メーカーである大日本電気の情報通信メディア研究所に勤務するエンジニアである。有名私立大学である慶應義塾大学の理工学部、物理情報工学科の大学院修士課程終了と同時に大日本電気に就職して、この4月で21年目となる。年齢も、45歳とバリバリの研究課長である。
 6年前から管理職になりエリートサラリーマンとして順調な経歴をたどっている。結婚は15年前に郷里の岡山で4歳違いの絵美と見合い結婚をし、翌年に長女の絵梨、そして、その2年後に長男の純一が誕生した。結婚当時は、研究所のある宮崎台の隣駅にある宮前平の社宅に住んでいた。情報通信メディア研究所からアメリカメリーランド州にあるコムサット(Comsat)の研究所に3年間赴任して、3年前に帰任したのだが、それに際して、横浜市郊外の緑区榎が丘に新居を購入した。最寄りの駅である田園都市線の青葉台まで歩いて10分ほどの距離である。子供たちは、この4月から中学校2年生と小学校6年生である。
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