家族の絆
 SAR銀行のダウナーさんが明言したように、SAR銀行内には指定の口座は存在していないということだ。このことは、紛れもない事実なのだから、もうこれ以上、ジョーが、ロバートが、何をいってこようと、自分が詐欺に巻き込まれてしまったということを否定することはできなかった。

 今まで、目の前で期限が切られて、いついつまでに支払いをしなくてはならないといった、いわゆる脅しのような言われ方に対して、どうも従っていたような状況だったように思う。ここまで来て、やっと自覚することができた。
 10月4日の午後4時以降どうなるものでもないと思った。しかし、気がかりなことがないわけではなかった。それは、祐一自身のパスポートのコピーをジョーにもロバートにも送ってしまったということである。このパスポートの情報が、何かの悪事に使われるようなことがなければ、問題ないのだが・・・。
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