家族の絆
将来へ向けて
 11月3日の文化の日に、ユキに青葉台の家に来てもらう予定である。絵美は、関係のない女(ひと)が榎が丘の家に来ることに反対していた。当日まで、その気持ちに変わりはなかった。祐一がかつて、学生の頃お世話になった三田のお店のご主人が亡くなり、その養女になった女性で僕を兄のように慕ってくれている人なんだと説明したが、どうして今ごろそんな話が出てきたのかといぶかしく思ったようだ。
 こちらから今まで、一切連絡していなかったことと、亡くなった親父さん達が岡山の実家とあまりいい関係でなかったために連絡を取ろうにも取れなかったことやたまたま、偶然に三田のお店を訪ねて、初めて親父さん達が僕のためにお金を残してくれていたことを知り、今度そのお金を届けに来てくれるのだという話をして、しぶしぶ納得していた。事情はともかく、絵美にとって、この家のローンで厳しい家計の状況にひとすじの光明が差し込んでくるかもしれないという期待と、関係ない女(ひと)が来るという納得のできない気持ちとが入り乱れて当日を迎えた。
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