家族の絆
ナイジェリアからのメール
 デジタル放送研究会の活動報告会も終わり、気分的にはひとつのことから開放された気持ちになったのは事実だった。しかし、まだいくつかの縛りは依然として続いていた。ひとつには情報通信メディア研究所の仕事がなかなかスケジュール通りにいかないことであり、その結果、現実に降格をいい渡されてしまったことであり、妻の絵美との間も何とはなしにしっくり行ってないように思えることであった。さらに、女将さんのことであり、ユキのことであった。

 祐一の普段の勤務であるが、平日の朝は、大体8時ごろに出社し、皆が出社してくる九時半頃にはメールの確認を済ませてしまうのが日課になっていた。その日もいつものように50通を越すメールに目を通していた。といっても、いわゆるジャンクメールも数多くあり、それらは読まれることもなくごみ箱に捨てられるのが普通だった。
 ジョー(Dr. Joe Madu)からのメールもこの日のメールの中にあった。そのメールのタイトルに緊急援助(Urgent Assistance)と書かれていたために、直ちにごみ箱に捨てられることはなかった。
 その日は、9時半になると直ちにデジタル放送研究会から電話が掛かって来て、いつもの喧騒にまぎれてこのメールのことは忘れてしまっていた。
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