世界のまんなかで笑うキミへ


やがてお母さんも席について、ふたりで朝食を食べ始めた。


テレビでは朝のニュース番組が流れていて、政治とか事件とか、平凡な家庭の高校生には途方もない話題が、延々とされていた。


「あら、殺人事件ですって……怖いわねえ。理央、あんまり夜遅くに帰るのはやめなさいね」

「………うん」

「ああそう、そういえば。昨日ね、おじいちゃんから電話があったの。たまには顔を見せに来なさいって。おじいちゃんが入院してたのは何年も前の話だし、今はまだ元気だけど、行けるときに顔を見せた方が………」


お母さんはそれからもずっと話していたけど、私の耳にはあまり入ってこなかった。


適当に「うん」と頷いていただけだった気がする。内容はちっとも頭に残っていない。


考えるのは、颯のことばかりだ。







学校では、なるべく気丈を努めて過ごした。


廊下なんかで見かける颯は、やっぱりいつも通り人に囲まれ笑っていて、少し腹が立った。


私だけ、こんなに悩んでるみたいだ。当事者は颯なのに。


なんだか馬鹿らしくなってきて、昼休み頃には颯のことを考えるのはやめていた。





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