世界のまんなかで笑うキミへ


よく考えたら、いつもそうだったじゃないか。


颯は、私が辛い顔をしているときに限ってよく笑った。彼自身は辛そうな顔は一瞬しか見せずに、すぐになんでもないみたいに笑っていた。


なのに私は、彼を責めることしかしなかったんだ。


気づいて愕然とした。なんてことをしたんだろう、私。



颯はきっと、何も知らないわけじゃない。


自分の立場も、周りからどう思われているのかも、ちゃんとわかっている。


わかった上で、いつも笑っている。



颯は綺麗だ。

純粋で、無邪気で、優しくて。


それは、彼がそうあろうとしているからだ。


私みたいにひねくれず、前を向いていようとしているから。


私と彼が違うのは、人から愛される絶対的な才能の有無なんかじゃない。



まっすぐでいようと努力しているか、していないかだ。







あのあと、急いで教室へ戻ってゴミ箱を置いて、私はまた早々に教室を飛び出した。


掃除時間はもう終わろうとしていて、早くに掃除を終えた生徒たちが、廊下を行き交っている。



< 151 / 282 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop