世界のまんなかで笑うキミへ


彼女のノリに慣れている私と先輩は苦笑いしているけれど、颯はいまいちどう反応していいのかわからないようで、戸惑った顔をしていた。


先生は颯に気づくと、驚いた顔をした。


「………あれ。うちに君みたいな部員、いたっけ」

「あ、いえ、俺は部員じゃなくて……えーっと」


何を言おうか迷っているみたいだ。颯が言うより、私から説明した方がいいだろう。



「先生。彼は私の友達で、最近よく美術室に遊びに来てくれるんです」



そう言うと、先生は「ふーん」と言って颯にじろじろと無遠慮な視線を向けた。


途端に颯が緊張した顔をする。彼はやっぱり変なところで人見知りだ。


湯浅先生は美術の先生だけど、この高校で美術教科は選択制だから、美術の授業をとらないと湯浅先生と関わることはほとんどない。


私は一年の頃に美術を選択したけど、おそらく颯は違ったんだろう。


「に、二年の橋倉颯です」

「……君、絵は描いたりするの?」

「いえ、俺は、そういうのは全然ダメで………」

「ふーん。じゃあほんとに遊びに来てるだけ?」

「はい。……あ、邪魔はしません!先輩と理央が真剣にやってるときは、黙ってるんで」


颯の目は必死だ。先生はさして興味なさげな顔で、「別にいるのは構わないけど」と言った。



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