世界のまんなかで笑うキミへ


次の夏休みには、遠出をしてひとりで病院まで会いに行った。


ゆっくりと、静かに、私と颯の関係は進んでいった。


だけど三年生に進級して受験生になると、手紙の返事はそれまで以上に遅くなった。


颯のことを忘れた訳じゃない。


ただ私は要領が良い方ではなかったし、器用でもなかった。自分のことで精一杯だった。


高校に入学してすぐに、色んな土産話を持って彼に会いに行った。


颯はやっぱり笑って話を聞いてくれたけれど、どこか前より元気がなくて。


もっと元気を出してほしくて、夏休み前に手紙を書いて送った。



………そこから、彼に関する記憶が途切れている。



去年の夏から今年の春までの間、颯との記憶がない。返信があったのかなかったのか、もうわからない。



どうして私は颯を忘れていたのか。


そして彼は病院にいたはずなのに、どうして私と同じ高校に通っているのか。



わからないことばかりで、私は混乱した。



唯一の手がかりである赤いスケッチブックを眺めていると、なんだか泣きたくなった。



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