春、さくら、君を想うナミダ。[完]
「……っ」
彼の指があたしの頬に優しく触れて
その瞳に吸い込まれるみたいに
引き寄せられていく。
重なる唇
その柔らかな感触にそっと瞳を閉じて
彼の香りに包まれる
息をするのも忘れるくらい、甘い夏の夜。
「……さくら」
名前を呼ばれるたびに、胸がぎゅってなる。
普段よりずっと
甘い声であたしを呼ぶから。
夢のような時間は終わらない。
打ち上げ花火の音を聞きながら、
何度も何度も
あたしたちはキスをした――。