あ、あ、あ愛してる
『まともに呼吸もできない、体も思うように動かない、たった数メートル歩くだけで息苦しくなる……また倒れたらと思うと……何も知らないくせに、何もわからないくせに』

「わからないよ。リハビリはまだ始まったばかりなのに、くよくよしているAliceの気持ちなんてわかりたくない」

拓斗がおどおどしながら、俺と花音の様子を窺っている。

「ばっかじゃねぇの! 外出許可でてるんだし、付き添って連れて行ってやるって言っただろ。お互いになじり合ってる場合かよ。和音は花音から元気をもらう。花音は目標に向かって最善を尽くす。それだけじゃん」

奏汰があっけらかんと言い放った。

「病室で悶々として、あれこれ考えて落ちこんでるより、外出して歌を聞いてたほうがずっといい」

ニコニコしながら付け加える。

「Alice、待ってるから」

花音は涙を拭き笑顔で言って、俺の掌に時計を持ったウサギのストラップをそっと乗せた。
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