あ、あ、あ愛してる
翌日、仁科は俺が登校するなり、俺を壁際へと押しやった。

「有栖川!」

壁ドンをして、俺に詰め寄る。

「小日向が伝言を見て急に泣き出した。黒板に書いた伝言を消しながら、留学してしまうあんたと連絡をとると、行かないでと言いそうになるのが怖いんだと言っていた。『LIBERTEの和音ではないAliceなんていらない』ヒドいことを言ったけど、言わなきゃ、あんたが留学しないと思ったそうだ」

俺は嫌われているわけではないんだと、ホッとして息をつく。

「小日向の気持ちが落ち着くまで、そっとしておいてやれないかな」

仁科の申し出に、自分が一方的だったことを反省し「わかった」と頷いた。

電話もメールもしないまま、日にちだけが過ぎる。

1日、1日、渡米の日が近づいていく。

不安と焦りをヴァイオリン演奏で紛らわした。

花音からの連絡は渡米が間近になっても全く来なかった。
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