真夜中のアリス

信じられないが、しめじのような椎茸みたいな頭のきのこが蝶ネクタイとビロードの燕尾服を着て杖を携え優雅に話している。穏やかな口調、そしてあたしの手の甲に軽く口付け(ってきのこに口があるのかどうか不明だけれど)を落とす所作がまるで英国紳士そのものだった。

「あ。ああ、君がアリスなんだね、フロイライン。こんな所にいてはいけないよ、さあ行こうオーナーがお待ちさ」

そのままあたしの手を取り、有無も聞かさず歩き始めたきのこの紳士。流石に少し焦りが出る。

「ちょ、ちょっと待ってよあたしをどうする気なのよ!ていうかオーナーって誰?」

「大丈夫、もう目の前だから。何も怖がらなくていいんだよフロイライン。
だからこれにて、闇夜の悪夢は終いなのさ」
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