世界の嘲笑にアルカイックスマイルを
sweet nothings


始業式の前の日、月に数回は訪れるバーに足を運んだ。

一人でカウンターに座ってそう早くないピッチでお酒を味わっていたのに、気づくと隣に女が一人。

肩で切り揃えられた黒髪は指がよく通りそうな艶やかさで毛先をふわふわさせていた。
二重の瞳は楽しげに俺を見て細められて、真っ赤な口紅の塗られた唇は三日月を描いていて。

ミニスカートの裾から惜し気もなく晒された足を組めば、他の客がちらちらと視線を宙にさ迷わせていた。


さらに気づくと人目につかない奥まったボックス席で同じ女に誘われてた。
太ももを這う手は脚の付け根ギリギリまで近づいて期待していた俺を嘲笑うかのようにそっけなく離れていく。



『ホテル、行こう』
腰を抱き寄せ堪らず言えば、不適に笑って彼女は目を閉じた。

引き寄せられるように近づき彼女を満喫する。
口内で舌を追っかけ、絡めて、体重をかけたその時


ピリッと舌に痛みを感じて思わず離れて、不機嫌を隠そうともせず見返せば
濡れた唇を妖艶に舐めながら彼女は言った。


「行くんでしょ?」

それにはっとして、支払いを済ませて彼女と手を絡めてネオンの光る街へ繰り出した。



引っ張られるから歩く、みたいについてくる彼女にちょっと焦りが生まれるけれども

彼女には場末のラブホテルなんて似合わない。


とか思いを巡らすも高級ホテルなんかに行く金も時間も余裕も持ち合わせてないし、と割りと綺麗目のところに目星をつけて入る。


『どこがいい?』
「どこでも、変なとこはやめてほしいけど」

クスクス笑う彼女にキスを落として、上の中の部屋を選んだ。


支払いを済ませ鍵を受けとると彼女は別人のように腕に絡んで甘えてきた。

ふわりと香ったそれは彼女のような女性たちが好んでつける人工的な甘い香りじゃなくて、シャンプーと思われる程度の仄かに香る柑橘系の匂いがした。




ばたん、鍵を閉めるのももどかしく彼女の唇を奪う。
香るシャンプーの匂いはますます俺を煽った。



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