天神学園の問題児再来
龍鷺郎の控室。

「おい」

「……」

「おい紗雪、もういい」

「何がよいのじゃ!ほんに、こんな大きな傷をこさえて!やはりお前は阿呆じゃな龍鷺郎!」

1回戦で受けた龍鷺郎の背中の傷を治療しながら、紗雪は言う。

ごくごく弱い冷気で傷口を凍結させる。

こうする事で痛みを麻痺させると同時に、血管を収縮させて出血を押さえる。

「さっき花龍に、何とかって精霊の力である程度の治療を受けた。大丈夫だ」

「天使様の力はよく知る所じゃが、念には念じゃ」

そう言って、丁寧に傷口を治療する紗雪。

言っておくが、龍鷺郎が心配な訳ではない。

…いや多少は心配しているが。

花龍の治療を、信頼していない訳でもない。

…ただ、その、不安なのだ。

1人でいる事が。

対戦相手はヴラド・ツェペリに決まった。

天神学園で、瑠璃、鬼龍と肩を並べるほどの恐怖の対象。

生徒達に悪鬼の如く恐れられている教師だ。

そんな相手と対戦する。

その事が怖かった。

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