恋する5秒前~無愛想なキミと~

「でも、高校1年の時に別れたって噂が流れてたけどな。でも、今も一緒にいるところを見ると別れてなさそうだな」


「そう……だね」


「じゃあ、どうして桜井はあのとき俺と水野さんの邪魔をしたんだ?」


「さあ……どうしてなんだろ?」


瀬戸君は眉根に皺を寄せて考え込んでいる。


「まあ、そんなに深い意味はなかったんじゃないかな?たまたま、声を掛けてきただけなんじゃない?」


「そうか」


「うん、そうよ」


桜井君に問い詰められたり、キスをされそうになった……なんて口が裂けても瀬戸君には言えない。


ここは適当に話を終わらせて話題を変えないと!


「それより、瀬戸君」


「ん、なに?」


「あのね、弟達にお土産を買ってから帰りたいの」


黙って出てきた罪ほろぼしに、翔と未来に何か買ってあげたいんだ。


「じゃあ、あっちに土産物屋があったから行こうか?」


「うん」


瀬戸君に促されてお土産店目指して歩き出す。


今日は瀬戸君とデートをしているんだ。桜井君の事を考えるのは、止めてデートを楽しまなくちゃ!


「この前、香奈がね……」


脳裏に掠める桜井君との出来事を振り払うかのように、私は瀬戸君と歩きながら会話を続けた。

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