恋する5秒前~無愛想なキミと~

「私ね、里美ちゃんが未来を保育園に預けて、朝早くから夜遅くまで一生懸命働いてるの知っているから。

私なりに少しでも役に立ちたいと思ってやっているだけなの。だから、気にしないで、ね?」


「環……ありがとう」


里美ちゃんはそう言って目尻を押さえてる。


「私はいつでも里美ちゃんの味方だからね!」


「環……」


お互いの顔を見て笑い合う。


里美ちゃんが旦那さんと別れてこの家にやって来たのは約1年半前。


里美ちゃんは、私のおばあちゃんと折り合いが悪くて、お姉さんである私の母親を頼って私の家に来たんだ。


その時、未来はまだ2歳。


まだ赤ちゃんっぽさが残っている未来を、私の父はとても可愛がったんだ。


思い出すなぁ。


まだ片言しか話せない未来が人見知りをして、私達家族に全然なつかなかったんだよね。


特にお父さんが未来を抱っこしたら火がついたように激しく泣いて困ったこともあったっけ。


なかなか泣き止まない未来のご機嫌を取るのは大変だったなぁ。


今は「そんなこともあったねぇ」と皆で笑い話になっているけどね。


「なんで、あたしアイツと結婚したんだろう?」


「あたし、もう疲れちゃった」


シングルマザーとして頑張る里美ちゃん。


しっかり者の彼女が、私のお母さんに愚痴をこぼす姿を何度か目にしてきたんだ。


大好きな里美ちゃんの力になれたらいいな……そんな思いで未来や翔の面倒を引き受けたんだ。


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