恋する5秒前~無愛想なキミと~
◇王子様表れる

夏休みに入るまであと1週間。


梅雨もすっかり空けて、夏空全開。


朝から厳しい暑さが体を襲ってきて、体力が既に消耗していた。


香奈と二人。


お昼休み、食堂から戻ってきて教室の中でダラダラしていると、急にクラスの女子がざわめき出した。


「王子だ」


「隣のクラスなのに、どうして?」


女子たちの囁く声が私の耳にも入ってきた。


「水野さん、ちょっといいかな?」


机に突っ伏していた私は呼ばれて顔を上げて、目の前に佇む一人の男子と視線を合わせた。


「瀬戸くん、どうしたの?」


一ヶ月前にも同じように彼から声を掛けられたっけ。


そのときは桜井君に邪魔をされて話を聞けなかったんだよね。


なんの話かな?


側にいる香奈の顔をチラリと確認する。


「瀬戸ちゃん、相変わらず王子様だよねぇ」


「なんだよ、小森。王子様って……」


暑さのせいなのか、香奈は訳の分からないことを瀬戸くんに言って困らせていた。
< 84 / 297 >

この作品をシェア

pagetop