ピアスの秘密
私は彼と、一度電話で話しただけだった。

どんなに騒いでも彼にはわからないと思ったら、残念だけど、少し緊張感が和らいだ。

そして、この招待席は舞台をみれなかったから、招待してくれた。
ただ、それだけのこと…

それだけのことだから…そう自分に何度も言い聞かせた。

今日は最高の席から領君がみれる。思い切り楽しもうと気分を切り替えた。

一斉に会場が真っ暗になった。
いよいよ始まる。この瞬間がたまらない。

突然会場が眩しいくらいに明るくなり、割れんばかりの歓声があがった。

Fの4人が並んで歌っている。ちょうど私たちの前に領君がいた。

夢のような時間がはじまった。
私たちは夢中で楽しんだ。

そして三時間はあっという間に過ぎてしまった。

ここちよい脱力感、最高に楽しく、最高の気分だった。

帰りたくなかったが、私たちは会場をあとにした。


駅へ向かう人混みに紛れながら、私と里香は歌や衣装、いろんな話を熱く語り合った。

突然、私の携帯がなった。
知らない番号だった。
こんなときにいったい誰からだろう。
「もしもし?」
「もしもし…」びっくりした。身に覚えのある声だった。


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