ピアスの秘密
それから数日後。
Fがテレビの歌番組に出ている。

今、領は韓国にいる。

テレビの中の彼は穏やかに微笑んでいる。

録画とわかっていても、自然に私も微笑んでしまう。
歌が始まった。
アップテンポな曲でハードなダンスを踊っている。

すごい、いつ覚えるんだろう。

かっこいい…

カメラ目線だと、見られているようで、思わず姿勢を正した。

目があっているみたいで嬉しい。

会いたい…

私は偽物と会っていたんじゃないかと不思議な気持ちになる。

国民的アイドルの青木領は輝いてみえ、私はその姿ににみとれていた。

「ちひろはほんとにF見てる顔は幸せそう。」

と夫に言われて、我に帰った。

「幸せ!」と笑った。

「はいはい」と夫も笑っていた。

なんだか少しほっとした。
気付くはずはないけれど、夫は私がクリスマスに領と二人で過ごしたとは、全く想像もしていない。

当たり前だけど、知ったらどんな顔をするんだろう。

それにしてもなんていい声だろう…

そう思うと、このきれいな声に囁かれ抱き締められた記憶をたどってしまう。

私たちは、これからいったいどうなるんだろう…

少し怖くなった。
< 95 / 109 >

この作品をシェア

pagetop